「IT時代こそ、「筆談」の伝統への回帰を」 (ハフィントンポスト 2015年12月17日)

ハフィントンポスト

「IT時代こそ、「筆談」の伝統への回帰を」

2015年12月17日

 

エマニュエル・パストリッチ

 

アジアの専門家たちの参加する国際会議に筆者も参加することがあるのだが、何度かばつが悪い思いをしたことがある。参加者のほとんどは政府閣僚や研究者、事業家たちなのだが、ぎこちない英語で軽く挨拶を交わしては、さっさと会話を終わらせて、そそくさと互いに離れていくのである。

専門家たちが集まるのには、飛行機等の交通費やホテル等の宿泊費にとても高い費用がかかる。ところが、専門家同士の間で交わされる会話はほとんどない。共有できる豊富な知識や経験があるにもかかわらずである。到着した時と同様に、帰途につく時も、専門家たちは相変わらず互いを知らないままなのである。

国際会議に参加するアジアの代表たちに、時間制限のない真摯な話し合いの機会が生じたならば、互いに豊富な知識を得られることであろう。例えば、各国ではどのような行政革新を立てているのか、製造業ではどのような技術を利用して、生産向上を高めているのか、といった内容などである。

未来の協力について真剣に考えて提案するためには、あえて直接、顔を見合わせて集まる必要はない。直接対面することで対人関係を円滑に築くことはできるが、オンライン上で文字のやり取りをすることがこれから一番効率のよい方法になりえるのではないか。つまりオンライン上の「筆談」である。

多くの場合、一度も会ったことがない人と話し合う際には、実際に会って話をする時よりもチャットをする方が、実のある情報をより多く交換することができる。

しかし、残念ながら、現在のオンライン上の情報交換のほとんどは、表面的なものばかりである。だが、参加者たちへ「チャット」の重要性を悟らせることができれば、相当に効果的なコミュニケーションができるだろう。

今日は情報通信技術が発達したにもかかわらず、むしろ、18世紀の日本、中国及び韓国の知識人たちの間でより深い談話が行われていたことは皮肉である。当時の外交の場では、漢文を作成・交換し、「筆談」でコミュニケーションが行われていた。外交文書だけではなく、社会や哲学・文学における重要な問題点に関しても、筆談によって細かい部分まで議論され、創意的に問題解決を探った。

金城学院大学の高橋博巳教授の本「東アジアの文芸共和国」を読むと、18-19世紀の日中韓の知識人の間では、今日よりも深い対話が交わされており、正に「以筆代舌(舌の代わりに筆)」だったことが分かる。

こうした点を参考にして、日本、中国、韓国、アメリカなど他の国からやって来た主要官僚や専門家たちがオンライン上で真摯に討論できる環境を作らなければならない。発言が正確に翻訳されれば、代表らはオンライン上で重要なテーマについても滞りなく意思疎通することができるようになる。例えば、日米韓中の専門家たちがオンライン討論をする際に、専門翻訳士たちが各人の発言を他の三ヶ国語に翻訳し、相手の画面にほぼリアルタイムで翻訳文が表示される、という具合にである。

こうしたオンライン討論であれば、三つ以上の言語が使用されても、結果的には各自が母国語で討論することが可能になるのである。この方式ならば、オンライン討論でなければ決して知り合うことのなかった人々をも繋げられる。

また、オンライン討論であれば全員が同時に着席する必要もなく、一週間に渡って討論することも可能な他、内容を記事やレポートの形で一般市民に公開することも容易になる。その上、これまで英語話者ばかりが占めた国際会議に、実際の政策立案者を巻き込むことが可能だ。

オンライン討論が普及すれば、日米中韓、そしてアメリカや他の国の政策立案者はオンラインチャットを通して意思疎通が可能になり、これが長期的協力の源泉になることに違いないだろう。

アジアの「筆談」の伝統を復興させることで、既存の科学技術を世界の様々な課題を議論するための有効なツールに昇華させることができる。そして、そこから学問や外交の新たな地平線が見えてくるはずである。

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