週刊金曜日
2019年 9月 27日
金曜文化
「武器よさらば 地球温暖化の危機と憲法九条」
著者に聞く
「武器よさらば 地球温暖化の危機と憲法九条」の著者エマニュエル・パストリッチは、米国生まれ。12年間、韓国に在住して著書を刊行してきたが、韓国での活動を終えて8月、米国に帰国した。今回、初の日本語著書刊行を機に日本を訪問。地球温暖化の危機は人類生存に関わる安全保障の問題であり、「この難題に立ち向かうのは日本の平和憲法だ」と語る。
直面する地球温暖化の危機を迎え、生き残るには莫大な予算が必要です。そのためには、武器を購入する余裕などありません。「武器よさらば」こそが地球温暖化という人類の危機への対処なのです。
日本の平和憲法の意義がそこにあります。戦車や戦闘機といった武器は、平和憲法にもとづいて購入をやめ、気候変動という、非軍事的な脅威にのために資源や技術を活用することができるのです。
実際、日本は気候変動に対して太陽光発電や風力発電など自然エネルギーの高度な技術をもっています。2011年に起きた原子力発電所の大事故の経験があるからです。
日本政府は1997年、京都で開催されたCOP3(気候変動枠組条約3回締約国会議)は、温室効果ガス濃度の減少対策として、原発活用を言明したのですが、大事故が起きた現在、それは過去のことです。
ただし、日本の脱原発運動と、地球温暖化阻止の運動は、平和憲法を生かす運動と結びついていません。
脱原発は具体化のプロセスが鮮明です。安全保障もそうであるべきです。「軍隊をなくせばいい」というだけでは、米国の軍産複合体はなくなりません。
日本の平和憲法で地球温暖化問題についての未来を切り拓かねばなりません。今回の本では、日本の自衛隊を、どうやって、地球温暖化問題に取り組む組織や役割に変えるかを示しました。
米国では日本の平和憲法を評価する人は多いのですが、平和憲法を持つべきだと主張する人はほとんどいません。韓国は日本の平和憲法を高く評価しますが、自らが平和憲法を持とうとはしません。
日本の安倍晋三首相は、平和憲法は過去のものとして、「改憲」を悲願としていますが、それだけ平和憲法を持つことは貴重なことなのです。
核兵器禁止条約に日米韓は署名していませんが、米国が核兵器を禁止することは十分に可能でしょう。トランプ大統領の発言は極端で、米国内が分裂しており、体制自体が崩壊する可能性がありますが、崩壊すれば抜本的な変化が可能だからです。
いずれにしても、軍事力で解決できない地球温暖化に対処するためには、平和憲法を持つ日本こそが、世界をリードしなくてはなりません。
(聞き手 堀田美恵子)
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